なんと、50年以上前から何度も起きているという「3Dブーム」。今度こそ、ブームから本物へと変わるのでしょうか。東京ゲームショウ2010で開催された「TGSフォーラム2010」のひとつ、「3D(立体視)セッション」で、そんな熱い議論が展開されました。
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司会を務めるたは雑誌「日経トレンディ」の渡辺敦美編集長。パレリストは映
像ジャーナリストの大口孝之氏、ソニーマーケティングから中村裕氏、Sony Computer Entertainment Worldwide StudiosからMick Hocking氏の3人。それぞれ研究者、ハード側、ソフト側から3D映像に携わっています。
■現われては消える3D
昨年の映画『アバター』のヒット以降、にわかに3D注目を集めるようになってきましたが、大口氏によるとこうした
ブームは過去何度も起きているとのこと。
映画に用いられる3Dには、いくつかの方式があります。まず色彩や波長によって左右に見える絵を分離するもの。代表的なものにはアナグリフ方式があり、なんと1922年にはこの方式の長編映画が公開されています。その背景には、ラジオの普及による映画離れがあったといいます。3Dによって、観客を映画に呼び戻 rmt アラド戦記
そうというわけです。しかし当時はトーキー(音声)、ワイドスクリーンへの対応に注力され、3Dは忘れ去られました。
その後、直線偏光フィルターを用いたパッシブ?ステレオが誕生し、直線偏光フィルターが市販されますが、これも第2次世界大戦の暗い時代の中で忘れ去られます。他にも、19世紀からあるアクティブ?ステレオ(残像を利用するもの)や裸 アラド rmt
眼立体映像(1903年に特許取得!)といった方式がありますが、いずれも定着しませんでした。
ところが’50年代に「第1次立体映画ブーム」が起こります。これはTVの普及に対し、ハリウッドが対抗するすべを模索したためで、1953年には40本以上の長編3D映画が製作されます。しかし、カメラに向かって物を投げつけるといった画一的な演出ばかりになった
ことや、日本製の偏光眼鏡の生産が追いつかなかったこと、果ては眼鏡を使い回すことで病気がうつるという風評まで流れ、結局ワイドスクリーンにとって代わられます。
「第2次立体映画ブーム」は80年代に起こります。今度はアメリカの各家庭にケーブルテレビが普及し始めたため、なんとか映画館に足を運んでもらおうというわけです。が、ここでも作品
の質が問題に。作品のほとんどがホラーやサスペンスのB級映画ばかりとなり、自然消滅したといいます。
80年代後半?80年代にかけては三洋電機が立体LVプレーヤーを試作したり、裸眼立体液晶ディスプレイを発売したりした他、ゲーム業界でも任天堂やセガが家庭用ゲーム機用の3Dシステムを発売。ランダム?ドット?ステレオグラムやステレオ写真の書籍も
売り出されます。しかし、やはりキラーコンテンツがなく、ブームとはなりませんでした。
2000年代に入ると、またもハリウッド映画が低迷します。リメイクや続編が増えたことや、ホームシアター普及による映画離れが原因です。そこで2005年、ジョージ?ルーカス(『スター?ウォーズ』など)、ロバート?ゼメキス(『バック?トゥ?ザ?フューチャー』など
)、ジェームズ?キャメロン(『ターミネーター』など)といった監督がデジタル立体上映のシンポジウムを開催。これが現在にいたる第3次立体映画ブームのきっかけになったといいます。
■「ブラビア」の取り組み
では、家庭における3D映像の環境はどうなっているのでしょう。中村裕氏がソニーのテレビ「3Dブラビア」の現状について話します
。中村氏は、営業の現場で10年間に渡り販促活動に携わってきた人物。ソニーの予測では国内における3Dテレビ需要は100万台だといいます。
3Dテレビの購入意向
そうしたなかで「単にシェアを取るだけでなく、3Dテレビを広めていきたいと」と中村氏。ソニーは先のワールドカップでは3D放送をサポート。各地で同社の「3Dブラビア」体験イベン
トを実施しているといいます。
また、「コンテンツ提供をしっかりしていくことが大事」だと、3D版『THIS IS IT』を販売したり、映画『バイオハザード4』を3D上映したりしています。『バイオハザード4』は3日間で81万人を動員。「『アバター』の次が大事だといわれているが、『バイオハザード4』がそれを継ぐのでは」といいます。
「ブラビア
」はLEDバックライトを採用し、部屋が明るいままでも3D映像を楽しめるようにしたほか、「4倍速技術」によって片方の目で見た映像がもういっぽうの目で見た映像と重なってしまう「クロストーク」現象の発生を極限まで抑えたとのこと。
さらに、専用眼鏡と映像を3D化するためのトランスミッションを別売するタイプもあるといいます。これにより、購入
者は好きなタイミングで自宅のテレビを3Dにアップグレードできるわけです。
「3Dテレビというと、通常の2D映像を観られないと考えてしまう方が多い」と中村氏。まずはそのイメージを払拭したいといいます。
3D映像の魅力として中村氏は「その場にいる体験ができる」ことと、「疑似体験ができる」ことの2点を挙げます。「ブラビア」の体験イベン
トで水族館での映像を3Dで流したところ、足の不自由なお客さんが「ダイビングをしているような気分になれた」と喜んでいたのが印象的だったといいます。
「これまでは先進層にしか響かない製品が多かったが、3Dについては老若男女、幅広い世代に受け入れられる」と中村氏はみています。
■家庭用ゲームにおける3D
続いてMick Hocking氏
が、3D対応ゲームを製作する立場から、現場の実状を語ります。
ゲームへの期待
Hocking氏はSCE WorldwideStudiosのシニアディレクターとして、ヨーロッパを中心に活動。「3Dゲームは現在、あらゆるコンテンツのなかで最も注目されている」といいます。リアリズム、奥行きのある視角、近接性とあらゆる要素でプレイヤーを魅了するというのです
。
たとえばレースゲームであれば、車間距離を把握しやすくなり、ブレーキングのタイミングがわかりやすくなります。F1レーサーのなかにも3Dゲームで感覚をつかんでいるドライバーがいるとか。
また、野球ゲームでも完璧なヒットにするためには、やはり3Dのほうが適しているとMick氏。没頭感や実際に参加しているような感覚を作り出せるといいま
す。
さらにMoveコントローラーを使えば、空間を制御しやすくなるだろうといいます。MOVEコントローラーはAR(拡張現実)との相性も良く、『ミー&マイペット』では、まるでそこにペットがいるかのような体験ができるとのことです。
PS3では、4月と10月のファームウェアアップデートで3D映像に対応。世界で3800万台の3Dブルーレイプレー
ヤーが増えることになるとのこと。PS3側では3D対応テレビか否か、画面の大きさはどうかを認識し、もっとも適した映像を、正確な奥行きで表現するといいます。
3Dゲームで課題となるのは、品質の高いものを提供するという点です。そのためにHocking氏らは、パララックス(視差)、焦点、輻輳(物が1ヶ所に集中する状態)に注意しながら、開発を進め
ているとのこと。「3Dは錯覚を用いたものですから、画面より前に焦点が合うように」作り、プレイヤーにとっての「『快適ゾーン』の中にオブジェクトを置くことが重要」だといいます。
また、3DゲームではUIの扱いがポイントで、画面の奥に入り込んでしまわぬよう気をつける必要があるといいます。FPSでは、プレイヤーの銃より手前に照準があるよう
に見えることがあるため、銃と敵との中間点にあるように調整しなければならないとのことです。ただ、ゲームは3Dに適したコンテンツで、レンダリングムービー以外は数人月で3Dゲーム化できるとのこと。むしろ、マーケティングやQAチームの教育が課題だといいます。
■最後はやはりコンテンツ
こうして三者の話を聞くと、いつの時代も3D映像
に求められるのはコンテンツだということがよくわかります。
「映画では、3Dを自在に扱えるカメラや監督が育つ前にブームが終わることが多かった」と大口氏。しかしその大口氏も、浜崎あゆみのライブを3D映像で観て驚いたといいます。「ライブは強い。手の届くところにいる感覚」だといいます。
中村氏もまた、コンテンツの充実は重要だと
いい、男性としての視点からは、成人向けのものも3Dの普及に影響するのではないかと話しました。さらに「ブラビア」体験会で好評だったものとして、自身や身近な人の3D映像を挙げました。「自分が3D映像になったものを観たことのある人は、これまでいなかった」と氏はいいます。
Hocking氏は「ゲームではすべての3Dゲームがキラーコンテンツに成り
うる」とし、「そのためにはハードメーカーとコンテンツプロバイダーが協力しなければならないが、我々はできているので自信を持っている」と語りました。
しかし大口氏は「映画ではすでに、2D/3D変換のものにクオリティの低い作品が出始めている」と、思想なき3D化に対し警鐘を鳴らします。この点にはHocking氏も同意見で、ゲームでも品質の維持に
努めたいといいます。
さらに大口氏は任天堂の「ニンテンドー3DS」に触れ、「裸眼での3D映像を否定する人は少ない。それも含めて3Dを肯定的に捉えてほしい」と、今後の3D映像、そして3Dゲームの可能性に言及しました。
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引用元:arad rmt
2011年5月7日土曜日
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